リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】研究室ゼミの実態

毎年ゼミが入るクリスマス

 毎年この時期、研究室全体ゼミが入ります。修士2回生は修論発表、学部4回生は卒論発表、修士1回生は中間発表を2月に控えていて、進捗報告と方針の確認をします。

 京都大学の教授は肩書きが膨大な量の仕事を呼んでくるため、とっても忙しく、あまり研究室で顔を見ることがありません。2年前から働いている知人秘書さんは、トータルで1ヶ月も教授と会っていないと言っていました。そこまでとはいかなくても、忙しい教授のスケジュールをやりくりして、たいていどこの研究室でも年末ゼミが行われます。教授がスケジュールとにらめっこをして「ここ!」と決めたら絶対で、クリスマスだろうが何だろうが関係ありません。本日と明日、私の研究室でも年末ゼミが行われるため、学生たちは、この3連休を資料作成に使ったのであろうと想像します。

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研究室のゼミで行うこと

 文系と理系では大学のゼミはだいぶ様相が違います。教員指導の下に学生が特定の分野・テーマについて文献輪読や研究発表・討論などを行うものをゼミと呼びます。講義とは別にゼミに属して、資料の調べ方やまとめ方、発表や討論の仕方を身につけていきます。文系の人たちは、ゼミが必修でなければ入っても入らなくても卒業への道は開かれています。

 理系では、必須というか自動的についてきます。研究テーマごとの小さなチームで、進捗報告や情報共有する場が隔週くらいの頻度であり、研究室全体での進捗報告が年に3回あります。それとは別に、学会や研究発表会がある時には随時発表練習や報告会を行います。研究室全体ゼミは、他チームのメンバーから別の視点でアドバイスをもらうことができる貴重な場です。また、他チームの研究について、本で知る以上の知識を得る効果があります。

ゼミで磨かれる能力

 ゼミの発表資料はパワーポイントで作ります。仮説を立てて実験、分析を行い、結果をグラフや表にまとめます。考案したモデルを使ってシミュレーションを行い、実験では得ることが難しいデータを予測します。これらの手法に論理の飛躍がないか、妥当な結果が得られているか、予想した展開と違っていたらその理由と解釈など、多くの目がスライドに注がれて議論が白熱します。

 これが年に何回もあるわけです。まずはスライド作りが上手になります。色使い、文字の大きさ、粗密感、配置、データの見せ方、図の効果的な使い方をマスターして、見栄えのいいものを作るようになります。次に、論理の組み立て方が上手になります。最初の頃は、実験した順番で話をするので何の戦略も感じられませんが、卒業する頃には筋道が通ったものになります。そして、議論に耐えうるほどに精神が鍛えられます。教授とガチで議論をするにはまだまだ及ばずというところではありますが、一方的に封じ込められることはなく、反論ができるようになっていきます。特に4回生は成長が甚だしいですよ。

今日のひとこと:ゼミには自己成長の効果がある