リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】大学生も対数関数的な成長をする

3ヶ月で話が通じるようになる

 大部分の学生は、通常椅子に座ったまま講義を聞くという形で大学生活を送っています。一言もしゃべらないまま1時間半の講義が終わっていくのを1日に3つとか4つ。言葉を忘れるんじゃないかと思いますね。サークルとかバイトで同年代の人たちと軽い会話はしても、深い議論をする人たちは少数派です。京都大学では、そんな生活を3年間送ってから研究室に配属です。

 配属された4回生は、専門分野の勉強はしてくるものの、話をすると高校生とたいして変わりません。何が言いたいのかさっぱりわからなくて、誰の話をしているのか、今のことか過去のことか、何に困っているのか質問しないと完全な文章にならない状況が訪れると新学期だなと季節を感じています。それがゼミに参加して先輩たちの議論を聞いたり、補完を促されつつ説明をしたりしているうちに劇的に変化します。3ヶ月経つと質問をしなくても話がきけるようになります。

 これ、家でも訓練できますよ。質問はしても構いませんが、物わかりのいい親になってはいけないのです。

向上心と指導が釣り合うところ

 私が所属している専攻では、4回生は3ヶ月間で仕上げる設計課題に取り組みます。条件をどうやって決めたのか、どこを工夫したのか、仮定をおいたところはどこなのか、などなど1~2週間に1回の頻度でおこなわれるラボ内のゼミで場数を踏んで、専攻全体での発表に挑みます。先輩たちからも愛のムチが飛んできて、「その数字の根拠は?」「グラフの見せ方が悪い。」「声が小さい。」とだんだん辛らつになっていきます。先生や上級生からの要求が厳しいとパワハラになりそうですし、かといって現状で良しとすると成長は望めないしで、能力に応じた絶妙なところでバランスするように思います。

 ラボ内での発表練習は4回にも及び、十分に練習を積んだはずなのですが。やっぱり緊張しちゃうんですね。本番では一部セリフがとんだり、同じことを何度も言ったり。そんな状態になっていたことも本人は記憶にないという一生懸命さが眩しかったです。

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スライド作りで気をつけること

 発表を通して、話すこととスライド作りが上手になります。

 4回生が最初に作るスライドは見にくいを通り越して醜いのです。文字サイズの使い分けや色使い、目の動線からのズレを修正するだけでグッと印象が変わります。

 だいたい「このスライドでは何が言いたい?」というところから始まりますね。ごちゃごちゃいっぱい書いているのに、何を伝えたいのかがわからないのです。1枚のスライドには言いたいことが一つです。そして、言いたいこととスライドタイトルは一致していなくてはならないのです。

 動線がずれるスライドは見にくいです。目は左から右へ、上から下へと動きます。右から左に矢印がでているのは許せません。結果を左下に書いているものおかしいです。文字や図は高さを揃えたり、中央揃えにしたりしてバラバラ感をなくします。同一レベルの文字サイズは統一するととっても見やすくなります。カラフルすぎる色使いは却下。温度が高いものは暖色で、濃度が濃いものは色も濃く。3色程度をベースに濃淡をつけるくらいが見ていて疲れません。基本的なことができてくると、フォントや文字のサイズ、線の太さまで注文がつき始めます。

 対数関数は最初のうちにぐっと大きくなり、だんだん増加度が減ってくる、上に凸の関数です。人は対数関数的な成長を繰り返しているなといつも思います。伸びが小さくなってからが勝負ですよ。

今日のひとこと:神は細部に宿る