リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】大学のお財布事情

国立大学法人運営費交付金

 2019年度予算案で、政府は国立大学法人運営費交付金のうち教育や研究の評価に応じて傾斜配分する「重点支援枠」を、全体の約1割にあたる1000億円に拡大する方針を固めたようです。国立大学協会会長の山極先生は、「短期的な評価による不安定な財源が拡大して、国立大学の経営基盤を不安定にし、財政基盤の弱い大学の存在自体を危うくする」と政府の方針に反対する主張をされています。

 この運営費交付金というのは、その名の通り大学を運営するために国からもらっている補助金で、研究費では支払えないものに使っています。例えば、人件費や光熱費、通信費、物品費。一部は研究室にも配分され、秘書の給与、光熱費、事務用品等に使用します。研究室まで降りてくる運営費交付金は一研究室あたり年間100~200万円で、運営費交付金だけでは非常に厳しい現実があります。

 国立大学の運営資金は、学生が支払う学費では全くまかなえません。京都大学の学生数は2018年5月時点で22,654人、教職員数は7,252人です。授業料は年間53万5,800円で、全額を人件費にあてても167万3,743円という非現実的な数字であり、国からの補助金=運営費交付金に頼っています。そもそも教職員の数が多く、そのうち事務職員が半分くらいを占める不思議な組織です。意味不明な事務仕事を作り出す天才的な組織の話はまたの機会に。

大学の研究費

 運営費交付金だけでは研究の推進はできないため、外部資金を獲得してくることになります。代表が日本学術振興会科学研究費助成事業。基礎から応用までの学術研究を発展させることを目的に、独創的・先駆的な研究に対して助成されます。ノーベル医学生理学賞受賞の本庶佑先生のおかげで科研費は増えるかもしれません。

 次に受託研究費。民間から委託を受けて実施する研究で、これに要する経費を委託者が負担するものです。それから共同研究費。こちらは、企業等と研究者が同一の研究テーマで、研究業務を分担して実施するもので、経費は民間企業が負担します。その他に、研究者個人に対して研究費を寄附くださる企業や個人の方もいます。

 これらの研究費には直接経費の5~30 %の間接経費が発生し、研究実施に伴う管理等に必要な経費としてお上に吸収されます。吸い上げられた間接経費の一部、たったの16.7 %!は研究室に降りてきて、それは運営費交付金と同じように使えます

研究助成金

 多くの公益財団法人が研究助成を行っています。学内の研究支援室ではなく、財団の理事自らが説明会を開催するというので、三菱財団の助成金説明会に行ってみたところ、財団の歴史や助成の趣旨を説明下さいました。助成金申請書を書く際には、申請しようとする研究が助成の目的に沿っているかは応募要領で確認するものの、背後に隠れた意図までは考えることがありませんでした。「私たちが持っているお金を価値があるものに変えたい。私たちには技術がないので、パートナーを探している。一緒に社会貢献しよう。」とおっしゃっていて、お金を出しておしまいではなく、道中も結果も見届ける意気込みに感動しました。年間の助成額は総額5億円、なかなか太っ腹です。

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今日のひとこと:何で社会貢献できるかを考える