リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】だいたいのことは自分でできる便利さ

工学系だとやっぱり工具を使う?

 データとにらめっこしている研究でなければ、工具を使う機会はたくさんあります。大きなスチール棚いっぱいに工具が並んでいて、必要なものを自分で選ぶ仕組み。ドライバーやレンチなんかは何十本もあり、ペンチ、ニッパー類も各種類十数本は置いています。六角レンチやスパナにいたっては百本はくだらないでしょうね。そんななかで、私の一番のお気に入りはラチェットレンチです。傾いた歯車のおかげで、締めたい方向(またはゆるめたい方向)と逆の方向に回すときは空回りするので、いちいちボルト&ナットから外さなくても回せる道具。考えた人偉い!!

 工房もあって、切削加工をするための旋盤や穴を開けるためのボール盤、レーザーカッター等を使って簡単な工作なら自分でできるようになっています。自分で金属加工をしてみると思った以上に難しく、摩擦でとんでもなく熱くなることを身をもって体験することができます。

普通の工学部生ならできるようになること

 スイッチを押して、電気が流れていないようであればまずは通電チェックをするためにテスターを使います。どこで断線しているのかの確認です。コンセントの電圧を測定することもあります。

 レンチを使ってボルトとナットを締めるのは日常茶飯事。二つのレンチを使う場合は、はさみのようにちょっと角度をつけて握るように使うと変な力を使わず上手に締めたり緩めたりすることができます。両手に1本ずつレンチを握って腕の力を使って締めるのは安定しないのでお勧めしません。最近は水道の蛇口が回すタイプでなくて上下に動かすようになったせいか、どっちに回したら締まるのかがわかりませんという学生が増えました。ペットボトルの蓋はどっちに回したら閉まる?と聞いて確認です。時計回りが締まる方向です。ヘリウムと可燃性ガスのボンベは逆ネジがきってあるので、注意が必要ですが。

 はんだごても使いますね。配線する際に導線と基板を固定する作業が必要な時があります。

 大学の研究室では、使用する電気の量が家庭とは比べ物にならず、大型の装置類は分電盤から直接電源をとります。おおもとの分電盤は300Aで、これが4つもあるとちょっとした工場です。そうなるとコンセントに差したら終わりではなく、圧着端子を使って電気ケーブルをつなぐための工作が必要です。コンセントの差し込み口が欲しいときは、ケーブルを必要な長さに切ってのコンセントタップ作りです。実験室では、アースがある3ピンのコンセントが標準仕様です。

f:id:gajumarun:20190826220745j:plain

 ネジの規格にも詳しくなりますよ。太さと長さでびっくりするくらいたくさんの種類があります。頭が丸い鍋ネジ、平らな皿ネジ、溝が彫ってある胴体部分がまっすぐな平行ネジ、先端にいくに従って細くなるテーパーネジ。オス側とメス側で呼び方が違います。同じテーパーネジでもISO規格のものとアメリカ規格で微妙に違います。そんなの知ってて何になる?という感じではありますが。

一家に一人いると便利な存在

 水漏れしている水栓のパッキンくらいは自分で交換します。お風呂のシャワーヘッドの交換や劣化したキッチンの排水管も自分で交換。がたつく引き戸はタイヤ交換すればOK。我が家ではちょっとめんどくさい作業はお父さんではなくお母さん担当です。

 だいたい不具合に気づいて不便さを感じるのはお母さんなんです。それを自分でさっさと直せるのはストレスがたまらなくていいですよ。やってみると案外自分でできることは多いものです。

今日のひとこと:工具が使えるかは慣れだけです