リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】安全第一で快適な空間を作る

安全巡視で危険を回避する

 約1年に1回、学内の衛生管理者による安全巡視というものが実施されます。避難路は確保されているか、緊急時の指示体制が掲示されているか、消火器は正しいところに設置されているか、転倒防止対策がなされているか、薬品の管理がちゃんとおこなわれているか、専門家のチェックを受け、指摘事項があれば是正していきます。2週間前くらいに日程調整の連絡が入り、そこから大慌てで対策をしていくというのが常です。実験系の研究室では、大型装置から小型の器具、工具、試薬といろんなものを備えているため、改めて危険がないか事前に確認をして巡視に臨みます。

まともな実験室に

 私が研究室に戻った8年前は無法地帯でした。これまでの巡視では指摘されるだけされて是正せず??じゃんじゃん買って、捨てることをしない習慣が積もりに積もって身動きができないくらい。猫しか通れない、と私には思える通路を器用に進む人たちに驚愕です。「捨てますよー!」と一方的に宣言して、有無を言わさず処分、処分、処分。私のおかげで、かなりまともになりました。自分が学生の頃に使っていた動きもしない実験装置を発掘して自分で捨てることになろうとは思いもよらずです。原価だと大豪邸が建つくらいは捨てましたね。歴代教授陣が愛着あって捨てられずに残していた試料&資料も遠慮なく大量に廃棄しました一時的に恨まれても、将来的には感謝されるはず。モノを捨てるのにはエネルギーがいりますから。

 1000種類ほどの試薬の廃棄は、非常に骨の折れる作業でした。中和して捨てられるもの、有機廃液として処分するもの、無機廃液処理するものに分けて、自分で処理できるものは処理。学外で処理してもらう薬品のなかでは水銀が一番面倒です。最終処理までおこなわれたことをちゃんと確認してようやく終了。半年くらいかかります。野村興産株式会社が国内唯一の水銀リサイクル処理企業で、北海道のイトムカ鉱業所で含水銀廃棄物の処理がおこなわれているんですよ。薬品廃棄にあたっては処理方法とか有害物質かとか調べるわけで、いろいろ詳しくなったので、ついでに甲種危険物取扱者の資格をとっちゃいました。

是正事項はなくならない

 片づけ始めたころは、当たり前すぎる指摘をたくさん受けました。そもそも避難路の確保なんかできていなかったし、転倒防止対策は何もされず。ガスボンベは転がっているし、圧力容器の点検もなされていませんでした。それが、回を重ねるごとになくなっていくわけですよ。そうすると、指摘事項がだんだん細かくなっていくんです。この人たちの仕事は指摘することだから、ゼロにはならないんだなと今回思いました。一昨日あった安全巡視での指摘事項は、「絶縁被覆ができていないところがある。(銅線-圧着端子接続部の熱収縮チューブ巻き忘れ指摘。)」「ドラフト内にすのこを敷くこと。風の通り道を作らないといけない。」「ガスボンベ立てのチェーンが緩いから、もう1コマ分きつくチェーンかけること。」「エックス線発生装置の表示は装置に貼ること。(小さい装置だったので、壁に貼っていた。)」「毛布は天日干しすること。(時々泊まる学生がいるので、毛布がある。)」など。あまりにも細かいので、私の耳は途中からガラガラガラ~とシャッターが下りました。ちゃんちゃん。

f:id:gajumarun:20190209113729j:plain

今日のひとこと:買ったら捨てて定常状態を保つ