リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【大学受験】京都大学の高校生向け体験型学習プログラムELCASの選抜試験

思考力が問われる数学

 本日ELCASの選抜試験がありました。理系分野は120名の定員に対し、申込先着320名が試験を受けることができます。320名きっちり受け付けて、当日の欠席もほとんどかなった模様です。ムスコ談。かなり余裕をもって30分前に到着したのに、8割くらい席が埋まっていたというので、皆さん気合が入っていますね。

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まずは90分の数学の問題。全部で6問。単に計算をするだけの問題は皆無です。

1. x = √(p/q)  (p, qは異なる整数)が無理数であることを示せ。

2. (1)|ax-5|≧b (b>0)の解を求めよ。

 (2)a=2のとき、xの整数解の個数は。

3. (1)y=x2+2ax+a+1 (a/2-1≦x≦a/2+1) の最小値mを求めよ。

 (2)mの変域は

4.{1/3の確率でAの袋}{2/3の確率でBの袋}から1個玉を取り出す。

 A:白2個、赤5個、B:白3個、赤2個

 (1)1 回取り出して白が出たとき、Aから取り出した確率を求めよ。

 (2)2 回取り出して白が出たとき、どちらもAから取り出した確率を求めよ。

5. 三角形ABCの∠BACを二等分する線とBCの交点をMとするとき、AB:AC = BM:CMを示せ

6. 三角形ABCの対辺をa、b、c、外接円の半径をRとすると

 a/sinA = b/sinB = c/sinC = 2R(正弦定理)が成り立つことを示せ。

ムスコの記憶頼りなので、多少違っている可能性がありますがこんなのだったそうです。5や6は図がなくて文章のみ。文章だけで図形がイメージできるかどうか

要約力が問われる記述課題

 休憩を挟んで、講演が2つ。それぞれ45分間の講演を聞いて、35分で内容の要約と感想を書くというもの。A3の用紙横向きに使って、左側は要約、右側は感想という形式だったそうです。

 一つ目は、宇宙地球分野で「100億光年の宇宙を見通すナノメートルの光学技術」。望遠鏡の進化についての講演で、レンズの仕組みや焦点の作り方、遠くにある天体の情報を得るための技術開発について話を聞いてきたようです。京都大学が開発した国内最大の光学望遠鏡「せいめい望遠鏡」の開発にあたっての、レンズ形状や鏡面加工などの苦労話もあったとのこと。

 二つ目は化学分野で、「化学反応が進む仕組みと触媒の役割について」。触媒自体は反応前後で変化しないものの、触媒が存在するだけで本来は進まないはずの反応が進むのはなぜかという話を、具体例を使って説明があり、エントロピーや確率の話にまで展開した話だったらしいです。

 35分で要約と感想をA3の用紙に埋めるのはかなりハードです。小学生の頃から30字でまとめなさい、とか、言い換えなさいとかたくさん訓練を積んできて、こういうところで実践となるわけです。大学のゼミでは、「要するに何が言いたい?」と言われる学生がいます。人の話をまとめる、自分の言いたいことをまとめる力は社会に出てからも必要なので、面倒でもトレーニングしておいた方がいいですね。

人の記憶力

 問題用紙は回収だったようなので、選抜試験を終えたムスコに再現してもらいました。ちゃんと覚えているものですね。これが3日も経過すると怪しくなってくるのかもしれません。

 人は忘れるものだから忘れたらまた覚えたらいい、何度も復習しないと定着しないと言われますよね。実際かなり忘れます。最近、2回完結型の講演会に参加する機会がありました。2回目の講演のときに、「前回ボクが話したことを何でもいいので言っていって。」と片っ端から当てていく人で。焦るっ!話は面白くて、90分の講演を飽きることなく集中して聞いて、しかもメモまでとった1回目の講演。にもかかわらず、2週間後におこなわれた講演の際には3割くらいしか記憶に残っていない、というか思い出せないのです。他の人が話しているのを聞いて、「あ、そうだった。」と思い出している自分に苦笑いです。新しいこともいいですけど、繰り返しは意味があると身をもって体験しました。

今日のひとこと:長い文章を書く練習をしておくべし