リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【中学受験】親のための受験になっていませんか

父親が子どもを殺すまで

 中学受験を控えた小学6年生の男の子が、父親に包丁で刺されて死亡した事件が2016年8月にありました。そして先週、父親に懲役13年の実刑判決を名古屋地方裁判所が言い渡しました。とても痛ましい事件です。教育という名の虐待があってはいけません。

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 被告人本人も、その父親も、そして被告人の弟も同じ名門私立中高一貫校出身で、殺害された児童を同じ学校に入学させようとしていたとされています。小学校4年生頃から、指示通りに勉強しないと殴ったり物を壊したりして激高するようになり、被害者を包丁で突き刺したと検察側は犯行の経緯を指摘しました。あるとき、カッターを見せたら男の子がおびえて勉強したことに味をしめ、ナイフ、包丁へとエスカレートしたようです。家にあった料理用の包丁ではなく、脅すための包丁を新たに用意したと報道されています。犯行の2日前には車で外出し、児童は車中で太ももを包丁で刺されています。ドライブレコーダーに残っているやり取りに胸が痛みます。

被告人も脅された経験を持つ

 普通の感覚では考えられない事件で、被告人の精神状態が異常であったとしか思えません。ところが、驚くのはここからです。証人として証言した被告の父親が同じように被告に対して教育虐待をおこなっていたのです。被告人の態度が悪いときやミスをした時には叩いたり怒鳴ったりしたと。自分と同じ薬剤師になってほしいと望み、子どもがつきたいと言う職業にならせようと思ったことはない、と言っています。さらに、被告が包丁で孫を刺して死亡させたことに関し、やり過ぎだったと思わないかと尋ねられて、中学受験生の親は必死になるものだからやむを得ないと答え、自分自身も出刃包丁を持ちだしたことがあると話しています。どう考えても異常な思考、行動でしかないのですが、被告の父親も自分の親から体罰を受けたり部屋に閉じ込められたり厳しい教育を受けてきたので、よくあることだというのです。もはや子どものためではなく、一種の洗脳です。

負の連鎖を断ち切るために

 殺害された児童がもし親になっていたとしたら、同じように自分の子どもに体罰を加えるのでしょうか。DVの加害者は自分自身も暴力を受けてきた割合が高いと言われます。誰かが断ち切ってあげなければなりません。力や恐怖で脅して従わせる以外の方法があることを知らないのです。

 危害を加えるまではいかなくても、怒鳴ったり小突いたりということは、一般の家庭でもあるように思います。自分の思い通りにならないと、激しくなる傾向があります。親の夢を子どもに託すのではなく、自分の夢は自分で叶えるものだと納得して、追い詰めないようにする努力を。たとえ小さな子どもであっても、親の従属物ではありません。

 昔勤めていた会社の社長さんから、中東で働いていたときに「日本人は、銃で言うことを聞かせるのではなく、言葉で人を動かす。」と感謝されたという話を聞きました。本当に支援が必要なのは、愛がないまま育ってきた親の方です。血の通った言葉で癒すことができれば、教育という名の虐待を過去に封じ込めることができます。過去は変えられなくても未来は変えられます。大事なのは心のつながり。親からの愛が足りていない人は他人からもらえばOK。私が実践している、自分が受けた恩は他人に返す「恩送り」をしてみません?

今日のひとこと:子どもには本人が望む人生を