リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【兼業主婦】物事を始めるのに遅いはない

異分野デビュー

 昨日、第56回日本リハビリテーション医学会学術集会@神戸にて異分野デビューしました。本業じゃなくて副業(?)趣味(?)の靴の研究発表で。2年前に始めた研究なので、この分野は新人発表です。

 ご縁があって、面白い靴に出会いました。履くだけで体のバランスが整い、勝手に足が前に進む感覚に陥る魔法の靴。人によっては腰や膝が痛くなくなったとか、歩くこと自体が難しかったのに歩けたとか、杖がいらなくなったなんてことが普通にあります。実際私たちは現場でそんな様子を何度も目撃しているんですけど、うさん臭いですよね。「そんなの、ありえへん。靴履くだけでしょ?」という感想はごもっともでございます。自分が体感していなかったら同じ感想を持つと思います。歩いていなかった人が歩くなんて、意味がわかりませんもん。そんな世間の冷たい視線を跳ね返して、メカニズムを解明できたらいいなというのがプロジェクトに携わっている要因の一つです。もうひとつは、母が晩年歩けなくて8年間も車いす生活を送ったことが大きいですね。歩ける機能が残っている人には歩いてもらいたいですし、痛くて歩かない人には痛みがない状態で歩いて欲しいというのが私の願いです。

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普通の靴と何が違うのか

 この靴、靴底に特殊なT字型の溝が施してあります。それだけです。でもまあ、Tなら何でもいいわけじゃなくて、元スプリンターで骨ストレッチ創始者の松村卓さんが、自らの身体感覚を研ぎ澄まして体と靴との調和を追究して開発したものです。この溝の効果で、体重のかかり方がうまく調整されるのでしょうね。体が軽く感じますもん。力がよそに逃げずに効率よく推進力に使われるために、歩きやすくなるのだと思われます。

 今回は、老健に入所、通所されている高齢者を対象に、普段履いている靴とT型の溝があるWT-LINE®シューズで歩行テストをおこなった結果を報告してきました。数値で表さなくても素人が見ても違いが分かるくらいに、背筋が伸びたり左右のばらつきが軽減したりしました。要介護認定を受けている高齢者が、自らの意志で靴によって体の使い方を変えるとは考え難いので、靴が勝手に体に働きかけたとしか思えません。歩行速度も上がる傾向があったのですが、途中で止まる人が少なからずいて一律の解析は難しいため、このあたりの解析法は今後の課題です。

 健常者を対象に、全く同じ靴で溝ありと溝なしを二重盲検法で比較もしています。それでもやっぱり違いがあるのです。WT-LINE®シューズは、骨や関節を本来あるべき位置に誘導してくれる靴という認識です。ほんのわずかな差が大きな違いを生むのだということを数字で証明していければなと思っています。

リハビリ医学界

 高齢者や機能低下、損傷がある人たちのサポートは、ハード面からもソフト面からも強化されているように感じました。アプローチ法や解釈の仕方がいろいろあるなという印象です。企業の展示ブースに並ぶ、機能回復訓練装置の立派なこと。本人の意思によらない訓練がなされなければいいなとちょっと不安になりました。いくつか試したのですが、機械に勝手に体を動かされるって気持ち悪いですよ。

 靴では損傷した機能を回復させることはできませんけど、残っている機能を引き出すことはできるかもしれません。年を取ったら腰が曲がるなんてことはありません。腰やひざは勝手に痛くなんかなりません。使い方次第です。親友歯医者さんは、「子供を一人生むと1歯無くす、、老化現象で歯が抜ける、、、という日本独特の”イケてね~”都市伝説を何とかする。」と言って日々頑張っています。1人でも多くの人が、そんな意識をもって自分の体を大事に使っていけたらいいですね。

今日のひとこと:やりたいことをやっていますか