リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【介護】施設で最期を迎えるにあたって

自宅よりも生活リズムが整う施設生活

 母が口から食べ物を摂取できなくなって2週間が経過しました。長くてもあと数日の命ではないかと思います。自宅介護が困難になり、介護付き有料老人ホームに入って6年半です。1日3食バランスのよい食事が提供され、施設の職員さんが声をかけてくれ、広いお風呂に入れてもらえるうえに、週に2回往診してくれる医師の指導のもと、常駐している看護師がバイタルチェックを欠かさずおこなってくれます。自宅にいた時よりもはるかに元気になり、こっちが驚くほどでした。それでもだんだん病状は悪化し、医師やケアマネと話し合いを続けて先月施設での看取りの同意書にサインをしました。その直後の容体急変です。当然別室で話をしているのですが、話を聞いていたのか、と思ったほどです。発熱して食事が喉を通らなくなって以来、往診日に点滴で水分補給をしている以外は特別なことは何もしていません。食事を口の中に入れても飲み込まないので、これは最後の意志表示なのかなと思っています。

延命を本人が希望するか

 本人が意思表示できないなか、延命処置をしないという決断をするのは非常に心が痛みます。それでも自分ならどうして欲しいかを何年も考えた末の結論なので、失われつつある命を見る目に涙はあふれても、私の意思が変わることはありません。施設での看取りを希望すると、基本病院に送られることもなくて、自然に命の火が消えるのを静かに待つだけです。病院では、延命を希望しないにしても、脈や血圧を測る装置にはつながれますが、施設ではそれもありません。呼吸が浅くなってきて焦点が合わなくなってくるのをただ見守っています。このまま穏やかな表情で眠り続けてほしいと今は願っています。

終のすみかの選択肢

 自宅で自活することが難しくなった場合、サービス付き高齢者向け住宅、介護付き有料老人ホーム、特別養護老人ホームが生活しながら最期を迎えることのできる施設の選択肢になります。

 サービス付き高齢者向け住宅は、高齢者が安心して住めるようにバリアフリーになっていたり、安否確認サービスがついていたりする住居で、自宅に近い感覚で住めます。有料で利用できる食堂や提携医療施設があるところが多く、介護サービスの有無は施設によって違います。介護が必要になったらでていかなければならない場合もあるので、注意が必要です。少し古いデータですが、2012年に厚労省が発表したデータでは、入浴等の介護サービスの提供をしている施設は50%、実績ありの25.3%を含めて看取り可能な施設が58.0%です。

 同じく厚労省が2015年に調査した結果によると、特別養老人ホーム(特養)で76.1%、老人保健施設老健)で64.0%が看取りをおこなっています。特養でも1/4は看取りをしていないのが驚きでした。病院送りになるということですね。特養は要介護4以上でなければ入所するのが困難です。老健は、自宅復帰を目的としている施設で、原則3~6か月で退所が求められます。ただ、はい自宅に帰りましょうと言われて帰れる人はほぼいないため、他の老健に移って、また戻ってきてと転々としている人がほとんどです。特養と老健は公が設置しているものなので、利用料金は低く設定されています。

 介護付き老人ホームはその名の通り介護サービスを提供している住居です。トイレ付きの個室ですが、自室にキッチンがついているようなところはなく、イメージするなら賄い付きの寮といった感じです。どの程度看取りをおこなってくれるのかはデータとしては見つけることができませんでした。施設で最期を迎える可能性があるのであれば、入所を検討するときには看取り実績があるかどうかを聞いてみるといいと思います。看取りが必要になってから次の施設を探すのは困難ですから。

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 いずれの施設も、中身はピンキリです。値段が高ければいいサービスを提供しているわけではありません。職員さんが誇りをもって働いているか、入所者さんの表情が生き生きしているか、いつでも訪問可能か。自分の目で確かめてください。私は、最後の親孝行だと思って自分が納得いくまで施設見学をして決めました。数日以内に訪れるであろう最期のときは、母も私も感謝の気持ちでいっぱいになると思います。

今日のひとこと:どこでも看取りをしてくれるわけではない