リケジョ的教育のすすめ

京都大学工学部で学び、現在は京都大学で働く正真正銘のリケジョ。中学受験と大学受験を経験した子どもたち、一緒に研究をしている学生から得た教育の極意を伝授します。

【京大理系研究室】巣立ちの時

贈る言葉

 モラトリアムを終えて、いよいよ明日社会人デビューする修士学生4人を研究室から送り出しました。毎年研究室の送る会では、スタッフからは励ましの言葉が贈られます。教授は、「もう十分勉強してきた。精一杯背伸びして頑張ってきなさい。お前らがわからんことは誰もわからん!いつまでも勉強しているんじゃなくて実践してこい。」ということを言っていました。もう一人の先生は、「健康一番で、頑張ってきなさい。心が折れそうなときは周囲の人に助けを求めてほしい。いつでも顔を見せに戻ってきてくれると嬉しい。」秘書さんは、「これから京大卒の看板を背負って社会に貢献することが求められる。期待している。」と。

 私は毎年、「これまでの人生は自分のために頑張ってきたはず。これからは、他人のために頑張る人生にしなさい。」と言っています。私自身は他人のために頑張る姿を彼らに見せ続けています。心に響くものがあれば嬉しい限りです。間違ってはいけないのは、自己を犠牲にして他人に尽くすことではないということ。自分が満ち足りた状態で、持てる力を他人にも注がなければならないのです。

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トラブル続出の思い出

 今年は泣かなかったです。感極まって涙がでてくる年もあるんですけどね。多分、手がかかりすぎたのでしょう。

 休暇を取って夢と魔法の王国から戻ってきたとある寒い冬の日。廊下や階段に点々と血痕あり、心臓バクバクしてたどっていくと、なんと自分の研究室で終わっていました。前日の夜に研究室の新年会があり、酔いが回ったT君は外に飛び出して、靴も靴下も脱いでふかふかの雪を布団にして寝ていたことが判明しました。裸足でウロウロしたために、足が傷だらけ。朝からT君を病院に連れて行くチーム、血痕を拭くチーム、靴や携帯などの落とし物を捜すチーム、ご迷惑をかけたところに謝罪するチームに分かれての活動が待っていて、一気に現実世界に引き戻されました

 S君は、研究室に配属された当時、あごは変形し、歯がない状態でした。本人は酔っ払っていて覚えていなかったのですが、自宅アパートの階段でこけて大けがをしたようで、これまた廊下に血痕が点々とあったために住民が驚いて通報し、警察と救急車がやってきてから自分の惨事を知るという情けない状況。歯を入れて、2年かけてあごもまともな形に戻りました。

 M君はパウリ効果の持ち主です。パウリ効果、知ってます?機械に触ったり近くにいたりするだけで壊れるというもの。なぜか電源が入らなくなったとか、エラーがでるとか、極めつけは彼の頭上の電気だけ消えたとか。それはそれはたくさんありました。何を出しているのでしょうね。そんなこんなで、彼らの卒業は私に安堵をもたらしました。

多少の鈍感さが必要

  話は元に戻りますが、今年一人の先生が「心が折れそうなときは周りに助けを求めて。」という話をされました。京都大学では毎年、新入生にチューターの先生がつくことになっています。1人の先生が担当するのは、学生2~3人です。そのうちの1人が大学に来なくなったというのが、2年連続で起こり、面談を実施されています。ちなみに、教授担当の学生も1人呼び出しです。かなりの確率ですよね。そんな状況のなか、ちゃんと卒業できるというのは素晴らしいことです。繊細すぎると心が折れてしまいます。自分は自分という、しっかりした土台を築いて、社会に適応していってもらいたいものです。

  未熟な新人たちが明日から職場に新しい風を送りこみます。温かく、愛情あるご指導をよろしくお願いします。

今日のひとこと:他人のために頑張るとエネルギーがわく